筋肉のコリは、痛みの原因ではなく結果?
そもそも、筋肉のコリとは?
「肩こり」という言葉で有名な「コリ」ですが、筋肉が硬くなっている状態のことを指します。
揉みほぐし・マッサージ・ストレッチでは、痛みの原因はこの「筋肉のコリ」であり、そこをほぐしたり伸ばしたりすることで、症状を改善したり、動きを改善したり、姿勢を改善したりすると言っています。
しかし、科学的な視点からの答えは、若干異なります。
守るために筋肉は硬くなっている。
侵害刺激という危険を知らせる入力信号がありますが、それが脊髄や脳に送られると、意識的or無意識的に、筋肉を硬めて守ろうとします。
例えば、ヤカンなどの熱いものに触れた時、無意識的にすごい速さで腕をひっこめますよね?
これを逃避反射と言いますが、その刺激が続けば、その筋肉の収縮パターンも持続してしまうのです。
つまり、侵害刺激が続けば、無意識的な筋緊張も続いてしまうのです。
これが「コリができるメカニズム」です。
また、この筋肉の緊張により、動きが制限されたり、姿勢が変化します。
では、慢性痛でずっと侵害刺激が続く状況は、どんなものがあり得るのでしょうか?
神経の炎症で、ずっと侵害刺激が続く。
筋肉を使いすぎた場合、数日、遅くても1ヶ月くらいで損傷は治ります。
つまり、筋肉が炎症し続けるというのは、体を休めずに使いっぱなしになっている運動選手などしか考えにくいのです。(手など日々使いすぎる場合は、筋や腱などの炎症の可能性もあります。)
筋膜も、怪我の場合以外では修復されるので、炎症し続けるというのは考えずらいのです。
残るのは「末梢神経」です。
神経は構造上、むくみの排出や炎症物質の排出がしづらくなっており、筋肉などに比べ、炎症が残る可能性が高いと言えます。(筋肉痛の後にずっと残る違和感も神経の可能性がある)
神経が慢性的に炎症を起こしていれば、その侵害刺激入力により、筋肉を硬めて守ろうとするので、コリができてしまいます。
そして、それは無意識的にも起こるので、自分でコリを緩めようとしても、弛緩することができないのです。
硬い筋肉を揉んだり、強くストレッチするのはリスクがある。
ここまで読んで、お気づきの方がいらっしゃると思いますが、筋肉のコリを強く揉みほぐしたり、強くストレッチすることにはリスクがあるということです。
炎症している部位に強い刺激を与えると、その炎症は増えてしまいます。(傷跡などをイメージしてみてください。)
よくある間違いはこのパターンです。
<非論理的な良くない解決法>
→硬い筋肉が痛みの原因だと考える
→硬い筋肉をもみほぐす/強くストレッチする
→DNIC効果で一時的に筋肉が緩むし、痛気持ち良い
→もみ返しが起こる(好転反応だと言い切る)
→逆に筋肉はどんどん硬くなっていく
→もっと強くもっと強くと、刺激の依存症になる。
DNICについてはこちらのブログをお読みください。
これは、根本的な考え方が間違っているから起こる現象です。
※最近流行りの、痛みを与える筋膜リリースも同じ機序です。
そうではなく、理想的な方法はこのパターンとなります。
<論理的な解決法>
→筋肉が硬いということは、その付近やルート上の神経に炎症があるかもしれない
→強く押したり、ストレッチすると悪化する可能性があるから、優しくゆっくり感覚を聞きながら、神経を伸ばしたり縮めたりする(決して侵害刺激を与えない弱さで行う)
→炎症が排出され、侵害刺激入力が減るので、守る必要がなくなり、自然と筋肉が緩んでいく。(出力がなくなる)
→筋肉が通常通りの柔らかさになっていく。
→日常の軽い神経への刺激にも、良い意味で気がつけるようになるので、日常生活での不可も減っていく。つまり、症状が長く改善しやすくなる。
筋肉は、ほぐすものではなく、ほぐれるもの。
筋肉というのは「収縮して!という出力」を送らなければ基本的には縮みません(意識的、無意識的含め)。
つまり、セラピストが揉みほぐしているのではなく、強い刺激のDNIC効果によって、脳内からオピオイドなどの鎮痛物質が出て、一時的に筋肉が「緩んで」(出力がOFFになって)いるのです。
ほぐすのではなく、ほぐれるものなのです。
優しく徒手で、神経の循環を改善してあげれば、自然と筋肉のコリは減っていきます。
さらに、筋肉の緊張がなくなれば、自然と可動域も広がり、姿勢も変化してきます。
いくら揉まれてもコリがなくならないと、お困りの方は一度、ご相談ください。