線維筋痛症は複数の神経の炎症?
線維筋痛症とは?
線維筋痛症とは、全身のいろいろな部位に激しい痛みを感じる疾患です。
原因は不明とされていて、診断方法も
①圧痛点(押すと痛い部位)の数や、
②痛みの主観的な評価、
③3ヶ月以上続く痛み、
の3点となっています。
一般的には、脳や脊髄などの中枢神経系の興奮や、痛みを抑制する鎮痛機構がうまく働かないのが原因では?と言われています。別名、中枢性感作とも呼ばれています。
また、ストレス、低気圧など様々な他の要因でも、痛みが増減(または移動)するということも言われております。この辺りも中枢性感作ではよく起こることです。
対処法が、強い鎮痛薬くらいしかなく、運動は良いとはいえ、痛くて動かせないことも多く、苦しんでいる方は一定数いらっしゃいます。
しかし、3ヶ月以上続く痛みで、圧痛点が少なければ一般的な慢性痛と言われ、圧痛点が多く、より痛みが激しければ線維筋痛症というのは、個人的にはあまり納得はいかない理屈です。
中枢性感作と末梢性感作
中枢性感作(脳や脊髄の敏感さ)だけではなく、末梢性感作というものがあります。
体の何かしらの組織が損傷したり、炎症した時に起こる敏感さを意味する単語です。
しかし、3ヶ月以上続くという時点で、損傷し続けているのは考えにくいです。
もし、慢性的な炎症が残っているのであれば、ずっと続く末梢性感作はありうるのです。
そして、炎症が残りやすい組織で、尚且つ脳に直接繋がっているのは、末梢神経なのです。(筋肉の炎症は使い過ぎや筋肉痛でない限り、そこまで長くは続かないと言われています。もちろん筋膜も同じです。)
神経の炎症とは?
末梢神経は全身にあり、様々な情報を脳へ伝えたり(入力)、脳からの出力情報を末端(筋肉や血管など)へ伝えたり(出力)したりしています。
つまり、脳からの出力と、脳への入力があります。
その末梢神経は、一本一本は細い繊維ですが、束になって全身に伸びています。
皮膚に行けば「皮神経/ひしんけい」、筋肉に行けば「運動神経」、血管に行けば「自律神経」にと呼ばれます。
その神経の束は、有名な坐骨神経もそうですが、指先で触れることができます。
学校の椅子で、後ろを振り向いた時に肘をぶつけて痺れた経験はありませんか?
あれも尺骨神経(しゃっこつしんけい)という神経の束なのです。
神経によりますが、皮神経でも2mm以上の太さがあったりします。
その神経の束が、日常生活で、長時間テンションがかかったり、圧迫されたりすると、神経内の血流が滞り、むくみます。
そして、そういう刺激が多ければ、神経は炎症してしまいます。
その神経の炎症が、肩こり、腰痛、膝痛、頭痛、足底痛、指先の痛みや痺れなど、慢性痛の原因になってしまうのです。
線維筋痛症と神経の炎症の関係性
神経の束には、神経幹神経という侵害受容線維、簡単にいうと「危険を脳へ伝える神経線維」があります。
それは、神経が損傷したときに働きますが、神経の圧迫やテンション、「神経の炎症」でも、脳へ危険だよという信号(侵害受容信号)を送ります。
この神経の炎症は、一般的な画像診断ではわからないため、見逃されてしまいます。(よく注意すればMRIやエコーでもわかる場合があります)。
つまり、複数の部位に神経の炎症があれば、線維筋痛症の症状の一部分を説明できる可能性があります。
このような論文があります。
「神経障害性疼痛が、線維筋痛症候群の一因であることが示唆されているが、全身性疾患のため、複数の部位の神経幹神経が影響を受けている場合、 この考えは可能であると考えられる。」
The Nervi Nervorum Missing Link for Neuropathic Pain?
つまり、複数の神経炎+精神的な不安やストレス=線維筋痛症
という考え方もできるわけです。
専門的に言えば、
中枢性感作と末梢性感作が合わさった状態です。
まとめ
線維筋痛症は、中枢性だけの問題と割り切って考えすぎるのは早計だと思います。
もちろん、痛みを与える徒手療法だと、神経の炎症は悪化してしまうので絶対お勧めはしません。痛みを与えることで中枢性感作も悪化し、末梢性感作(神経炎など)も悪化してしまいます。
ただし、痛みを与えず、優しく神経の炎症物質を排出してあげれば、神経の浮腫は減る(末梢性感作の減少につながる)ので、そう言った方法は推奨できると思います。
また、末梢神経の炎症が減れば、神経幹神経から中枢へ行く侵害受容信号も減るので、中枢性感作自体が減る可能性もあります。
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